オールディーズの語源



 私がかつて設けたオールディーズの定義とは別に、言葉そのものについて解説しておくことにします。
 私が常用している英和辞典は、S & Hのスラングが最も多く載っている、小学館発行の「英和中辞典」(以下、辞書という。)で、1982年発行のものです。
 Oldiesという言葉は元々、Los AngelesのD.J.であるArt Laboeが、'60頃から使い始めた言葉であるOldies But Goodiesを短縮したものであると思われます。辞書によれば、OldiesとはOldieの複数形で、話し言葉で、歌や映画などで古い物を意味します。'60当時にも一般的に使われていたかどうかは不明です。
 一方、Goodiesというのは、辞書によればGoodyの複数形で同じく話し言葉ですが、語感から受ける単に良い物以外にも意味があるため、こちらは古くから用いられている言葉だと思われます。
 Rock'n Rollが登場し、Billboard誌などのヒット・チャートが軌道に乗り始めた'60頃に、過去のヒット曲を見直して集めたLPが、盛んにリリースされるようになります。そのオリジナルとも言うべきものが、Art Laboeが使い始めたOldies But Goodiesをタイトルにしたもので、Original Soundレーベルがリリースしたのが最初といわれています。まさに、古くても良い物という言葉の意味のとおりでありました。
 その後、ヒット曲に力を入れている比較的メジャーなレーベルである、RouletteレーベルからのGolden Goodiesシリーズや、LibertyレーベルのOriginal Hitsシリーズなどが相次いでリリースされるようになります。そのほかに使われたタイトルとしては、Golden Oldies、Original Goldiesなど様々なタイトルの所謂オムニバス盤がリリースされました。元祖の方は、O.B.G.と略称されたりしていましたが、Oldiesイコール古くても良いアメリカン・ヒッツの等式が定着していったのです。
 日本では、Super Marketのことをスーパーと略し、映画の字幕(スーパーインポーズ)を字幕スーパーというし、長い英語や組み合わせ英語の前半のみを略していうことが多いです。ロス・アンゼルスをロスというのは間違いであっても、日本ではロス・アンゼルスのこととして通用しています。
 そういった用法からすれば、まさにOldiesというのは、Oldies But Goodiesという言葉を日本風に短縮した言葉だともいえます。
 Oldies But Goodiesシリーズは、CDの時代になっても生き残り、相当の枚数がリリースされています。リリース当初、これらの各シリーズは全てモノラルLPのみがリリースされていました。なぜって、ヒット曲は45rpmのモノラル・シングル盤だし、それを聴いていたラジオはAMのモノラルでしたから、当然といえば当然なんですね。当時のモノラルLPは極めて音質も良く、コレクションには最適でした。
 それが、'70代になると擬似ステレオ技術が盛んになり、劣悪な音のLPがほとんどになってゆきます。ステレオ音声を拒否したプロデューサーとして有名なのは、The Beach BoysのBrian Wilson、Phillesサウンドの生みの親Phil Spectorでしょうかね。彼等のサウンドは、音を複雑に積み重ねることでその良さを発揮していましたから、音を分離してしまう当時のステレオ音声技術は我慢ならなかったことでしょう。
 CDの時代になると、劣悪な擬似ステレオがむしろなくなったのは良かったのですが、未発表のマスターテープからデジタル・リマスタリングするため、レコードとしてはモノラルのみしかリリースされていないものまで、トゥルー・ステレオ=レア物との図式から、これらが盛んにリリースされてゆきます。肝心の、オリジナルのサウンドは置き去られたかのようでした。
 現在でも、有名なヒット曲のモノラル盤は極めて入手困難です。CDになると全部と言っていいほど、ステレオ音源になってしまいますからね。
 さて、以上でOldiesの語源について大体のことがお分かりいただけたと思います。音の関係は、また別の機会にでも書いていきたいと思います。
(2004/08/24)